宮城県民が、北九州へのがれき持ち出しに住民監査請求

環境ジャーナリスト、青木泰さんから最新情報が届きました。

【青木泰氏より】

 11月29日、宮城県のがれき広域化処理に対し、広域化を止め、契約の是正を求める住民監査請求が被災地市民から行われ、翌日河北新報で下記のように報道されました。
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がれき広域処理「予算無駄遣い」
東日本大震災で発生した石巻地区のがれきを北九州市や東京都で広域処理をするのは違法として、県民2人が29日、処理の差し止めを求め、県監査委員に住民監査請求をした。
請求では県が同地区のがれき処理量を精査した結果、当初の685万トンから310万トンに減少したことから「広域処理の必要はなくなった」と主張。「広域処理は県内処理よりコストが高く、最小の経費で最大の効率を求める地方自治法に違反する」と指摘した。
請求人の一人で仙台市若林区の自営業者高橋良さん(55)は県庁で記者会見し「復興予算の無駄遣いだ」と話した。県は石巻地区で発生した災害廃棄物のうち北九州市で約2万3000トン、東京都で約6万トンを処理する予定。

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           住民監査請求書
宮城県監査委員殿

1.請求の趣旨
宮城県知事に対し、がれきの広域処理に関する違法な公金の支出に対し、地方自治法第242条の第1項に基づき住民監査を行い、当該行為を防止し、当該契約を是正することを求める。

2.事実経過と請求の理由
1)宮城県は、昨年7月29日に、石巻ブロック(石巻市、女川町、東松島市)のがれき(&津波堆積物)のプロポーザル審査を公告(資料1)し、同年9月6日処理委託契約を鹿島JVとの間で仮契約(資料2)し、議会承認の後、9月16日に業務委託契約を締結した。
宮城県は、本年の9月議会において、同鹿島JVとの業務委託契約を、委託量と委託金額を下方修正する契約変更議案を提出した。(資料3)
それによれば、当初のがれき685万トンを310万トンに55%削減し、津波堆積物292万トンを43万トンに85%削減し、それに伴い契約金額を1923億6000万円を約1482億円に削減する提案を行い、議会承認を得た。
宮城県は、この提案の一方、がれきの全国広域化について、5月の見直し後に、環境省を通して発表していた「16都府県にがれきの処理を依頼する」という内容を、8月には、現在調整中のものに限るとし、実質東京都と北九州市に絞ることを発表した。
以上のように宮城県のがれきは、自らが業務委託契約していた契約内容の大半を下方修正したように、無くなりつつある。

2)ところが宮城県は、この後もがれきの広域化事業の一環として他の自治体にがれきの処理を委託している。
宮城県は、今年8月31日北九州市との間で、石巻市の震災がれき23,000トンの受け入れ協定を結び(資料4)、9月10日に仙台塩釜港からがれきの搬出を行った。北九州市では、搬入されたがれきを9月17日から北九州市の3つの焼却炉で焼却を開始した。
一方宮城県は、東京都及び(財団)東京都環境整備公社との間で、昨年11月24日がれき受け入れの基本協定を結び、それを受けて東京都は、がれきの受け入れを、都内の区市町村に薦め、今年4月1日から東京二十三区清掃一部事務組合が、区内の各清掃工場で、受け入れを開始した。(資料5~9)
また東京都下三多摩地区でも、宮城県の契約変更後、複数の清掃一部事務組合と市町村で受け入れが計画されたり、開始されたりしている。
今年5月21日のがれきの総量の見直し後、東京に運ぶがれき量は、10万トンから6.1万トンに下方修正され、23区内はそのうち、5万トンを予定し、三多摩地区は1.1万トンが予定されていたが、契約変更後も、三多摩地区へのがれきの委託契約が行われた。(資料10)

3)がれきの全国広域化は、宮城県ががれきの処理に困り、がれきの処理が進まなければ、災害復興が進まないという名目のもと、全国の自治体で説明され、受け入れが図られてきた。
しかし現状では、民間委託したがれきや津波堆積物、数百万トンが下方修正され、契約変更している。明らかに、広域化の必要性は無くなっているのに、新たに締結するのは、契約の前提になる事実に虚偽があり、住民の福祉の向上に役立たねばならないとする地方自治法第2条14項に違反する。
またがれきの処理コストで考えると、鹿島JVへの委託単価は、1トン当たり約2万円である。それに対して広域化の経費は、数倍から5倍にもなる。安く契約している契約を変更しながら、高い契約に変更するのは、地方自治法第2条第14項(最小の経費で最大の効率を求める)に違反するだけでなく、広域利権の疑義がある。

4)なお上記問題をより具体的に検証する。
A)北九州市との8月31日の契約については、次のような点で問題がある。
    •    北九州市へは、雲雀野の仮置場からがれきを運ぶことになっている。
現状雲雀野仮置場は、鹿島JVの管理におかれ、結局鹿島JVに委託していたがれきを、引き抜いて北九州市に運ぶということである。鹿島JVとの契約単価は1トン当たり約2万円であり、北九州へは、約10万円かかると言われている。わざわざ契約変更して高い処理に代えるというのは、理由が成り立たない。
    •    北九州市との契約は、今年8月31日に行われた。この時点では、鹿島JVとの昨年結んだ契約は、変更されていない。したがって契約上は、鹿島JVと契約を結んでいるがれきの処理を、北九州市に依頼したことになり、震災廃棄物の処理に関して設けられた「再委託の特例」からも逸脱した「再々委託」であり、民法119条に照らして違法な二重契約である。


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がれきの広域化問題では、これまで受け入れ自治体の住民が、放射能汚染やアスベストの影響を考えた反対の陳情や請願そして住民監査請求や民事ー損害賠償請求などが出されてきましたが、排出側の被災地から住民監査請求で、問題を提起したのは初めてです。